夢のような恋だった
動いたのは、立っている草太くんの方が先だ。
私はすぐに腕を引っ張られ、廊下の壁にたたきつけられる。
「なんですぐ開けなかった、紗優!」
視界に光が飛んだ。
ぶつかった衝撃で一瞬意識が朦朧としたけれど、智くんが私をかばうように間に入ってくれたから、彼の姿を確かめたくて遠ざかりそうになる意識を留める。
「やめろ、紗優に手をだすなよ」
「うるせぇな。お前こそ引っ込んでろ」
草太くんが強い力で智くんを振り払い、彼は体をよろめかせたものの、再び私と草太くんの間に立つ。
「そこまでだよ。警察呼ぶよ」
そこに、第三者の声がする。
廊下の先に、三人の男女の姿があった。サイちゃんと琉依ちゃんと壱瑳くんだ。
スカートを振り乱しながら、前のめりになって怒っている琉依ちゃんを壱瑳くんが抑えている。
「ちょっと私のお兄ちゃんに何すんのよ!」
「琉依、ちょっと黙って」
「もう-! 離して壱瑳!」
憤然とする琉依ちゃんをなだめつつ、携帯を構えたサイちゃんが一歩前に出た。
「さっき、ねーちゃんをぶっ飛ばしたとこ、動画に撮ったからな。これ出せば警察も動くと思うよ。アンタ自分が本気で正気だって思ってる? 今のアンタみたいな怖い男、ねーちゃんが惚れるわけ無いじゃん」
「んだと?」
サイちゃんの方に向かっていこうとする草太くんの腕を、智くんが引き止める。