夢のような恋だった
ようやく浮上してきた意識に目を開けると、見えたのはくしゃくしゃのくせ毛と広い背中。
「……え?」
「起きた? 紗優」
すぐ近くから智くんの声。
どうやら私は彼におぶってもらっているらしい。
「智くん。私、寝ちゃった?」
驚いて聞き返すと、クスクスと笑い声が返ってくる。
「よく寝てたよ。ずっと忙しかったし疲れてたんだろ」
「それは智くんだって。あ、下ろして。もう歩けるから」
「いやー、たぶん無理だと思うけど」
そう言いつつ、智くんはゆっくりと私を下ろした。
「重たかったでしょ。ごめんね」
彼の背中をさすってから歩きだす……つもりだったのに、足が上手く前に出ない。
まっすぐ歩いているつもりが、ぐにゃりぐにゃりと曲がっていく。
なんで、どうして?
頭はこんなにスッキリしてるのに!
「ほらね。紗優結構飲んだもん。はい、諦めて背中に乗れよ」
「や、でも。ずっとじゃ重たいもん。大丈夫」
「いいから。その状態で帰ったらいつ家につくかわからない」
確かにそれは一理ある。
私は諦めてもう一度おんぶしてもらった。
うう、恥ずかしいなぁ。
もう二十五歳になったっていうのにこの体たらく。