夢のような恋だった
こんな大きな花束、きっと高いし、買うのも恥ずかしかっただろう。
それでも私のために持ってきてくれたんだって思ったらそこは素直に嬉しかった。
「……花束、ありがとう」
「どういたしまして。あ、紗優、新しい鞄かったのか? これ今人気あるんだぜ?」
私の反応に気を良くしたのか、草太くんは明るい調子で中へと入ると投げ出しておいた鞄をまじまじと見て笑った。
「家族からのプレゼントよ。私、七日、誕生日だったの」
草太くんは目を丸くして私を見る。
「マジ? なんで教えてくれないんだよ」
「忘れてたの。しばらく忙しくて」
「じゃあ、遅れたけど俺にもお祝いさせてくれよ。今から出れる? なんかうまいもの食べに行こう」
「今は……仕事中だから」
そう言ったところでタイミング悪くお腹がなる。
ぐぐうと響く、大きな音だ。
恥ずかしくて顔を抑えた私に、草太くんが優しい顔で私の肩を抱く。
「はは。腹減ってたらいいもん書けねぇよ。煮詰まった顔しててもダメだ。気分転換も必要だろ。行こう」
まだ迷っている私をおいて、草太くんはお風呂に行くと洗面器に水をため花束をさし、「これでよし」と笑う。