夢のような恋だった

許せたけれど、許したことが良かったのかどうかはわからなくなってきた。

少なくとも、草太くんの浮気に私はここまで動揺しなかった。
今は何の繋がりもない智くんには、初対面扱いされただけでこんなにショックなのに。


やっぱり違う?
許せるようなのは恋じゃない?


「ね。なんで草太と付き合ったの?」


茂くんの眼差しが痛くて顔を伏せる。

草太、草太って、茂くんが気にしてるのは草太くんのことばかりだ。


「……ごめん。私ちょっと気持ち悪いんだ」


これ以上かき回さないで。
そんな気持ちを込めると、茂くんは黙った。

やがてやってきたタクシーに乗り込むと、茂くんが見送ってくれる。


「茂くん、迷惑かけてごめんね……ありがとう」

「気をつけてね」


扉が閉まるまでの間、彼はずっと手を振り続けていた。

なぜ彼は私にこだわるのだろう。
好かれるようなことは何一つしていないはずなのに。

そんなに草太くんに勝ちたい?
茂くんが好きなのは私じゃなくて草太くんなんじゃないかとさえ思ってしまう。



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