夢のような恋だった
琉依ちゃんは苦虫を噛み潰したような顔をして私に携帯を差し出した。
「紗優ねえちゃん、泊めてよ」
「ダメだよ。心配してる」
「でもいま来られたってさ気まずいもん。彩治と合わす顔もないし、壱瑳とだって……」
「気まずかったらサイちゃんはこんなふうに琉依ちゃんのこと探したりしないよ。琉依ちゃんが大事だから、迎えに来るんでしょ。好きにならなくてもいいからちゃんと友達でいてあげて、サイちゃんと」
「でも」
「それに、壱瑳くんも困らせてるよ。いいの?」
そう言ったら、琉依ちゃんは真っ赤になって黙った。
他の誰よりも、確かに琉依ちゃんには壱瑳くんが効果がある。
本当に、好きなのかなぁ。
家族愛が高じているだけ?
でもそこは私には判別つかない。
小一時間も待っていると玄関のベルがなる。
扉を開ければ、息を切らしたサイちゃんと壱瑳くんの姿があった。
「ねーちゃん、ごめん。琉依は?」
「琉依」
私が答えるより先に、部屋の隅に隠れようとしている琉依ちゃんに気づいた壱瑳くんは部屋の中に入り込んだ。
半泣きの顔で睨む彼女の服の裾を、無言できゅっと掴む。
「……帰ろう」
「壱瑳」
「行こう」