ジャスミン
『残念だなんて〜もぉ、茉莉ちゃんってば!』

口をへの字にして落ち込む振りをする美香に三人は苦笑いをした。

『…まずは座ったら?』

颯太郎のもっともな提案に後ろの席からいそいそと飲みものを運び、美香は茉莉の隣りに大樹は颯太郎の隣りに座る。


『…全部聞いてたんだよね?』

答えは分かり切っているのだが、自分の心の中を丸裸にされたようでいたたまれない気分になる。

『盗み聞きとは…。』

恐らく颯太郎も同じ気持ちなのだろう。俯きがちの顔は何処と無く赤みを帯びている。

『確かに悪趣味だったわ。ごめんなさい。…でも心配で居ても立っても居られなかったの!』

美香の表情はいつになく真剣で責める気持ちは不思議と全く起きなかった。


『美香…ありがとね!』

茉莉の微笑みを混ぜた言葉に美香は涙目になる。

『あっでも!二人のことは二人で解決してねっ‼︎…きっと大丈夫だから。』

『あぁ、分かってる。色々とありがとう。』

茉莉が口を開くよりも前に颯太郎が伝えたい言葉を言ってくれて何だか心が温かくなった。
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