ジャスミン
『あなたと颯太郎がお付き合いをしていると耳にしました。もし本当にそうなら別れてもらいたいの。』

予想はしていたとはいえ、何の前触れもなしに否定されたことに驚きを隠せない。

『それは私では認めてもらえないということでしょうか?』

『…そうとって頂いて構わないわ。』

相変わらずの無表情に怯みそうになるものの、颯太郎の顔が浮かび、自分を奮いたたせる。

『私にとって颯太郎さんはとても大切な人なんです。確かに颯太郎さんのお家柄からしたら私は相応しくないのかもしれません。でも、それを補えるくらい努力していくつもりです。どうかもう少し見守って頂けませんか?』

茉莉は今の自分の想いを真っ直ぐに伝えた。

『…茉莉さん。あなたは金子グループの後継者と付き合っていくことの意味を本当に理解していますか?周りには颯太郎に対してよく思わない者たちも大勢います。そんな中で、孤独にも耐えながらグループを率いていかなければならないのです。あなたは颯太郎の為に全てを捧げる覚悟はおありで?…例えば、すぐにでもお仕事を辞めて頂くとか。』
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