ジャスミン
『そろそろ行くか。』
『待って!』
そう言いながら茉莉の横を通り過ぎ、歩き出す颯太郎を茉莉は呼び止める。
『私、ここで大丈夫だから。』
『え…いや、送っていくよ。』
茉莉は首を横に振ると、その申し出を断る。
『ううん。ここで良い…お願い。』
『…分かった。じゃあ、先に行けよ。』
頑なに拒む茉莉にそれ以上無理強いは出来ず、せめてもと見送ることにする。
『…うん。じゃあね…。』
そう言うと一瞬の間が空き、茉莉が颯太郎の目の前に近寄る。触れるだけのキスを交わし泣きそうな笑顔で一言だけ言うと一度も振り返る事なくその場を後にした。
『ありがとう。』
残された颯太郎は不意打ちの出来事に動揺し、手を先ほどまで触れていた自分の唇に持っていく。視線の先には前を見据えて歩いて行く茉莉が雪に邪魔されてどんどん見えなくなっていく。
颯太郎はその場にしゃがみ込むと『これで良かったんだよな?』と自問自答する。
いくら考えても答えの出ない時間を暫らく過ごすと無言で一人立ち上がり、駐車場へと向かって行った。
『待って!』
そう言いながら茉莉の横を通り過ぎ、歩き出す颯太郎を茉莉は呼び止める。
『私、ここで大丈夫だから。』
『え…いや、送っていくよ。』
茉莉は首を横に振ると、その申し出を断る。
『ううん。ここで良い…お願い。』
『…分かった。じゃあ、先に行けよ。』
頑なに拒む茉莉にそれ以上無理強いは出来ず、せめてもと見送ることにする。
『…うん。じゃあね…。』
そう言うと一瞬の間が空き、茉莉が颯太郎の目の前に近寄る。触れるだけのキスを交わし泣きそうな笑顔で一言だけ言うと一度も振り返る事なくその場を後にした。
『ありがとう。』
残された颯太郎は不意打ちの出来事に動揺し、手を先ほどまで触れていた自分の唇に持っていく。視線の先には前を見据えて歩いて行く茉莉が雪に邪魔されてどんどん見えなくなっていく。
颯太郎はその場にしゃがみ込むと『これで良かったんだよな?』と自問自答する。
いくら考えても答えの出ない時間を暫らく過ごすと無言で一人立ち上がり、駐車場へと向かって行った。