ジャスミン
ピッ
車の鍵を解除すると、運転席に乗り込み一人項垂れる。

不意に茉莉の座っていた助手席を見ると綺麗に包装された箱が置いてあった。颯太郎はその箱を慌てて開ける。中にはネイビーにシルバーのラインが入ったネクタイが「メリークリスマス♡」というカードと共に入っていた。

『…くそっ‼︎』

颯太郎はそのネクタイを取り出し、しわくちゃに握り締めながら涙を流す。

一人泣き腫らす颯太郎が思い浮かべるのは先ほどの茉莉の泣きそうな笑顔だったーー。




同じように茉莉も一人歩きながら人目をはばかることなく泣き続ける。

顔は雪で濡れたのか涙なのか分からない。でもそれが茉莉には丁度良く、自分の切ない想いを洗い流すかのように泣き続けた。


家に着くと、全てをリセットするかのようにシャワーで身体を洗い流す。

浴室から出ると、ソファに身体を預ける。空っぽになった心は簡単には元に戻らないかもしれない…でもいつかこの道が正しかったと思えるように自分のやるべき事に全力で取り組むことを心に誓う。

ジャスミンのバレッタを大切に握り締めてーー。
< 317 / 348 >

この作品をシェア

pagetop