お見合いの達人
じりじりと間を詰めてくる男から、

ずりずりと逃げる女。


「なんで逃げる」

「え、えっとー……あ、ほら、そうっ、

 ほら私たち、と、友だちじゃない?

 距離近くない?」


「友だち以上になれたんじゃない?

 俺は思いっきり恋愛感情あるし?

 だからさ、

 いいじゃん?

責任取るし?」


「セ、責任とか勝手に取る気にならなくていいから……お茶飲むって、

カ、カフェオレさめちゃうし……ちょっと火傷だってさ……ほら……ね」


フンと鼻を鳴らして、

私の答えなど、大して気にもしてないって感じでソファーから降りると、

きっちり正座しながら、さっき入れたカフェオレを一気に飲み干すと、

「ところで……」

ソファーの下に手を突っ込んで何かを取り出し、

ポンと目の前に置いた。

「あっ!」


その物体を見て言葉を失った。

『やさし』

と楷書で書かれた金色の箱にはサイズM12個入り

ときっちり明記されてた。


「誰と使うつもりなの?」


藤吾が部屋に来た時ふざけて買ってきたやつだ。

そんなとこに置いてったのか。


「ええ、と……それは……」


『俺と使うんだよね?』


ここにいるはずのない男の声に振り返ると、

ソレをこの部屋に持ち込んだ張本人が玄関に立っていた。

「藤吾っ」



















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