お見合いの達人
トシローはちょっと不機嫌そうな顔して、

「あいつなら帰ったよ。

 面倒は御免だってさ」


「あ、そうなんだ」

あの空気にならなくてホッとしているのは確かだけど、

ちょっと、がっかりしちゃったりして……


あんなに纏わりついてたくせに、

めんどくさいとか言われちゃうんだ。


「けど、

結構堪えるな。

あいつのこと好きなんだな奈留は」



「え?」


「わかるよ。

 だって俺の方ちっとも見ないじゃん」



「そんなことっ」



「部屋入れよ、身体冷えてる。

俺も、奈留の顔見たら帰るつもりだったし」



違うんだって言おうとしたけど、自分自身が藤吾とのことどう思ってどうしたいのか、よくわからない。


鬱陶しいとかしつこいと思う気持ちと、

あいつが可愛いくて、手放したくないような気持ちが日替わりで出たり入ったりするのだから。


何も言えず、帰っていくトシローを見送った。

その日トシローは一度も振り返ることなく帰って行った。

当然と言えば当然なんだけど、胸が痛んだ。

モテキなんて浮かれて人を傷つけただけだ。



「ごめんね……」

届くことのない謝罪はそのまま夜の空気になった。

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