佐藤さんは甘くないっ!

「……昨日、三神くんが酔っ払っちゃって」


佐藤さんの手をぎゅっと握りながら、ぽつりぽつりと言葉を零していく。

宇佐野さんが言ってたのは、このことだったのかもしれない。


“三神相手じゃ柴ちゃんが諦めないとね”


あの言葉には、もしかしたらそういう意味があったのかもしれない。

わたしに話したら気にするだろうと思って言わなかったに違いなかった。

その通りだと思う。宇佐野さんはよく人を見ている。

今日だってわたしは普段通りに振る舞えなくて、三神くんを意識しまくっていた。


「……ああ」


そんな優しい声で、相槌を打ってくれなくても良いのに。

佐藤さんが不快な気持ちになると解っていてわたしは昨日の話をしている。

わざわざ話すことじゃないと思うけど、黙っていてもきっと隠し通せない。

わたしはそんなに器用じゃない。

それに佐藤さんの優しさに罪悪感を抱き続けるのは辛かった。

昨日のことをなるべく丁寧に、詳細に説明した。

三神くんにされたことも、わたしがしたことも、2年前のことも。

佐藤さんはずっとわたしの手を握ってくれていた。


「これで全部なんですけど……わっ、」


話し終えると、佐藤さんが無言でわたしを抱き寄せた。

そのままぽんぽんと優しく頭を撫でられて、もう我慢できなくて、スーツを濡らさないようにこっそり泣いた。

今日はたくさん撫でてもらえる日だなぁ。幸せだなぁ。

そんなことを考えながら、わたしはその優しさに甘えていた。
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