佐藤さんは甘くないっ!

佐藤さんはまだ仕事があるというのでひとりでオフィスに戻ると、デスクにチョコレートがたくさん置いてあった。

なんだろうと思ってみると、付箋がついていた。

名前は書いてなかったけど誰の筆跡かなんてすぐに解る。

三神くんの整った文字で“僕はいつもの柴先輩が好きです。早く戻ってくださいね。”と書いてあった。

こんなの誰かに見られたら勘違いされるでしょうが!

恥ずかしくなって三神くんのデスクを振り返ると、子供っぽい笑顔でこちらを見ていた。

元はと言えば三神くんの所為だけど、彼なりの配慮であることは明確だった。

…後輩にフォローされるようじゃだめだなぁ。

くすっと笑って、そのチョコレートを口に放り込んだ。

勝手にわたしが意識しておかしな態度を取って、…ただそれだけの話だ。

ひとりでぐるぐる悩んで落ち込むような真似はもうやめよう。

三神くんがわたしに“応え”を求めてくるまでは上司として振る舞おうと決めた。

たぶん三神くんも今朝のような態度を取るわたしなんて望んでいない。

ごちそうさま。

口パクでそう伝えると、一瞬目を見開いたあと、ぺこりと頭を下げてきた。

よし!さぼった分しっかり仕事仕事仕事!

自分に気合いを入れ直してキーボードに向かい合った。

少し席を外していただけなのに書類はどっさりと増えていて、お昼休みまでに終わるか考えるだけで頭が痛くなった。

だけど心は驚くくらい軽くなっていて、思わず笑みが浮かんだ。
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