佐藤さんは甘くないっ!

立ち話もなんだったので、そのまま思い出のカフェに入ることにした。

優輝以外のひととは来たことがない。

別れた直後は、このカフェの前を通るだけで悲しい気持ちになった。

だけど、今は。


「俺ここのチーズケーキ大好きだったなぁ。郁巳はいちごタルトだよね」


優輝と一緒に、またこのカフェに来ることができるなんて。

今でもわたしの好みを覚えてくれていることも嬉しかった。

忘れていないのはわたしも同じ。

優輝はケーキのお供に絶対ブラックのコーヒーを頼むことだって、覚えてる。

……とても鮮明に。


「美味しい!やっぱりここのケーキ最高!」

「郁巳、一口食べる?」

「うんありが……」


はた、と時が止まったような感覚がした。

優輝もわたしにフォークを向けたまま固まっている。

そして一瞬の静寂の後、同じように笑い出した。


「2年経っても忘れてないんだね!」

「俺もびっくりした!郁巳にいつもケーキあげてたよね」

「ほぼ反射的に返事しちゃってたよー」


けらけらと笑いあう心地良さは、本当に2年も時が経っているのか疑わしいほどだった。

もっと緊張すると思ってた。

もっと気まずいものだと思ってた。

そんな心配は全て吹き飛ぶくらい、優輝と一緒にいるのがとても楽しい。
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