佐藤さんは甘くないっ!
目線の高さは、わたしがヒールを履いている所為で少し違った。
だけどその笑顔を見た瞬間に、心臓がどきどきと音を立て始める。
応えるように自然と笑みが零れた。
わたしもだいぶ髪を切ったけど、優輝の髪もさっぱりしていて不思議なくらい大人っぽく見える。
「変わってないね」
二人して同じことを言ってしまい、お互いの顔を見合わせて吹き出した。
良かった。全然変わってない。
……良かった?
記憶の中の優輝と同じで、どうしてわたしは安心しているんだろう。
わたしだって絶対にどこか変わっているし、優輝だってきっとそうなのに。
また胸の中に黒いもやもやが広がっていく。
だけどそれを打ち消すように、優輝に会えた喜びが大きかった。
「急にメールが来たからびっくりしたよ」
そう言いながら嬉しさを隠しきれない自分が愚かだと思った。
佐藤さんへの罪悪感なのか、胸がつきんと痛む。
その痛みを無視してわたしも笑顔を作った。
優輝は少し恥ずかしそうにはにかんだあと、変わらない優しくて甘い声で言った。
「郁巳に会いたかったんだ」
待ち望んでいた甘美な響きは、昔の思い出をより鮮やかに、美しく染め上げるようだった。