佐藤さんは甘くないっ!
最上さんに連れてこられたのは、人気のない倉庫だった。
倉庫といっても、資料室と同じつくりの部屋を勝手に倉庫として使っているだけだ。
この倉庫には主に第一部署が荷物を置いている。
だから何度かは入ったことがあるけど、滅多なことが無ければここには来ない。
「単刀直入に言うわ。馨と別れて」
振り返った最上さんは鋭い目付きでわたしを睨みつけると、仁王立ちのまま静かな声音で言った。
予想していた通りの言葉だった。
本当はわたしから話そうと思っていたけど、最上さんからアクションを起こしてくれるとは思わなかった。
向かい合ったまま、わたしたちの間には見えない火花が散っている。
あのときは馨さんの彼女だって言えなくて黙ってしまったけど今は違う。
もう逃げない。
真っ直ぐに最上さんの吊り上がった瞳を見返すと、驚いたように目が見開かれた。
……わたしだって最上さんに言いたいことは山ほどある。
「……最上さんは、馨さんのどこが好きですか」
「はぁ?なんでそんなこと……」
「答えられないんですか?」
身長はわたしの方が負けている。
おまけに向こうはハイヒールでさらに差は開いている。
見下ろされているようで気分は悪いけど、負けじとわたしも睨み返す。
最上さんは大きな溜息を吐くと、煩わしそうに目線を落とした。