佐藤さんは甘くないっ!

「馨さんが言ってました。あいつは俺の顔にしか興味ない、って」

「……そうね。顔、スタイル、仕事ができるところ、それくらいかしら。私に見た目で釣りあう男は馨くらいよ」


最上さんは依然として視線は逸らしたまま、床に向かって言葉を吐き出した。

わたしは唇を噛み締めたまま、怒りを堪えていた。

このひとはどこまで身勝手なんだろう。

出張のことだってそうだ。

元々は星川さんと行くはずだったのに、それをこのひとは自分の都合で乗っ取って。

馨さんに来てもらうためにわざと書類を忘れていって。

……本当は馨さんのことが好きなくせに、そうじゃないような振りをして。

もう我慢の限界だった。


「……最上さんは嘘吐きですね」

「なんでそんなこと言われなきゃいけないのかしら?」

「馨さんのことが好きなくせに、どうして隠すんですか」

「……何を言ってるの?私はアクセサリーとして馨のことが好きなの」


この期に及んでそんな解りきった嘘を吐く最上さんは、はっきり言って馬鹿だ。

わたしに無いものをこのひとはたくさん持っている。

地位も名誉も美貌も、馨さんの隣に立つ資格も、全部全部持っているくせに。

馨さんと一度はお付き合いしていたくせに。

……そんなひとが、かっこ悪い真似なんてしないでよ。


「……わたしは、最上さんが羨ましいです」

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