佐藤さんは甘くないっ!
暫しの沈黙。
先に口を開いたのは馨だった。
「……だっせぇ」
「うわー!酷いこと言った!!僕だって思ってるよ!解ってるから言わないでよ!」
「五年以上も同棲しておいて、お前が早く言わなかったからだな」
真っ当すぎる言葉がぐさぐさと胸に刺さる。
やっぱり笑われたし……余計に心の傷が広がったんだけど。
自業自得だって解ってるんだよね、だけど、さ。
「だってさ……タイミング、見失うんだよね。もう結婚してるみたいな気がして」
「それでもいつか言わなきゃいけねぇだろ」
「そのタイミングを探してたら……向こうから言われちゃったんだよね……はぁ」
とうとう堪えきれなくなったように馨が噴き出して笑ったので、ムカついて一発殴り返しておいた。
まぁ、言われちゃったものは仕方ないからね。
さっきの落ち込みようから一転した僕の表情を見て、馨もにやりと口角を上げた。
「宇佐野はそうじゃないとな」
「どういう意味だよ、それ」
女の子から言わせるなんてこと、させたくなかったのにさ。
言わせちゃったのは僕の落ち度だからしっかり挽回させてもらうよ。
とびっきりのプロポーズ、計画しないとなぁ。
「僕と馨、結婚するのはどっちが先だろうね」
「お前な気がするけどな、両親公認だし。早く郁巳の家に挨拶行きてぇな……」
「あはは、彼女の家に挨拶行きたいなんて言うの馨くらいじゃないの」
「そうか?あいつを育ててくれた親御さんなんだから、会うの楽しみだけどな」
……馨のそういうところ、本当にかっこいいよね。
あー、僕も負けてられないなぁ。
「頑張れよ、宇佐野」
「どーも。馨もね」
さて、帰ったらレストランの予約しないとね。
こういうのは早い方が良いし、週末には決行しなくちゃ。
……結婚、か。
ずっと考えてはいたけど、いざプロポーズをするとなると緊張する。
彼女は喜んでくれるかな。
馨の付き添いで行ったとき、実はこっそり僕もエンゲージリングを作ったなんて話したら、笑うかな。
...fin.(20150905)
