佐藤さんは甘くないっ!
そこで…ふと気付く。
わたし、佐藤さんのこと何も知らない気がする。
どこに住んでるとか、何が好きだとか、嫌いだとか、趣味だとか。
…ランチには一緒に行くけど特にこれと言って佐藤さんが好きと言っていたメニューが思い出せない。
たぶん聞いたことがないし、いつも決まって同じものを食べるわけでもない。
…………ちょっと、いやだいぶ、知らなさすぎる気がする。
本当に仕事の面でしか今まで付き合ってこなかったし、佐藤さんもそれを望んでいると思っていたけど。
それはわたしの勘違いだったのかもしれない。
どうしてもっと関わろうとしなかったんだろう。
佐藤さんは“無理して話すな”って言っただけで、話し掛けるなって言ったわけじゃなかった。
言われたときはちょっと怒られたのかと思って怖くてへこんだけど。
もしかして、あれは佐藤さんなりの優しさだったの…かも。
ぐるぐる考えていると、いつの間にか三神くんが降りる駅に差し掛かっていた。
……しまった、考え事しててひとりでいるような気がしてたけど違う。
でも三神くんは気分を害した様子もなく、へらっと笑って言った。
「柴先輩、なに考えてたんですか?恋する女の子みたいな顔でしたよ」
そう爆弾を落として、お先に失礼します、と三神くんは電車を降りていった。
…こ、こい、する…。
わたしは茫然としたまま何も言えなくてただ彼の背中を見送るだけだった。
そのあと最寄駅から家までとぼとぼ歩きながら、自分の気持ちがよく解らないことに頭を抱えた。
確かに告白は嬉しかったけど今まで佐藤さんのことをそんな目で見たことがない。
わたしも同じ気持ちかと聞かれたらそれは違うと思う。
だけど、このままなかったことには…したく…ないような…。
こんな曖昧な返事をしたら佐藤さんやっぱり怒るかな…。
時間が経つにつれて、溜息を深くするばかりだった。