佐藤さんは甘くないっ!

うんうん唸って考えていると、佐藤さんが資料棚に肘を付いてぐっと距離を詰めてきた。

びっくりして後ずさりたい気持ちに駆られたが、前は佐藤さん、後ろは資料棚に挟まれていてそれは叶わなかった。

どれだけデジャヴの連続なんだろうか…心臓に悪いからその整った顔を無闇に近付けるのはやめて欲しい。


佐藤さんは挑発するような目付きで赤い舌を覗かせた。

意地の悪い顔。

こんなときだけ少し笑うなんてずるい。

……嫌味なくらい、えろくて、かっこいい。



「あんなによがってたくせに」



…突然落とされた爆弾に頭はショート寸前である。

顔が勝手に熱くなって、耳までその赤がじわじわと伝わってしまう。

さっきまでの行為が脳内でフラッシュバックしてわたしを余計に煽った。


「そ、そんなことはっ…!」


必死に言い訳をしようとするわたしの言葉を遮るように、悪魔の囁きが紡がれる。

甘い毒のように、低音が耳朶に染み込んで苦しい。

それすらも嘲笑うように悪魔は目を細めてわたしを殺そうとする。


「ふうん?俺の事が大好きって顔してたけど」


……ま、まて、まて、おちつこう。

だめだ、だめだ。

おちつこう。


実は策士な佐藤さんに乗せられてはいけない…キスして顔を真っ赤にしていた佐藤さんはもういないのだ…多分。

そうだ落ち着くために違うことでも考えよう。

しかしなんで今日はまたいきなりあんなことを仕掛けてきたのか。

朝会ったときは割と普通に鬼畜シュガーだったし、まだ可愛いって思えるくらいだったのに…。

佐藤さんは何かのきっかけで、突然悪魔スイッチが入ってしまうようだ。

あの日は多分わたしが合コンの話をしたからそのスイッチが入ってしまって……キスとかしちゃったけど。



……あれ、じゃあ今日は、なんで?

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