佐藤さんは甘くないっ!
もちろん全てを律香に話すつもりでいたので、月曜日から始まったサプライズの連続をゆっくりと話すことにした。
律香は郁巳の祝い酒だなんて言いながら何故か自分の既に速いペースを更に加速させていたが、どうせ吐くほど潰れることはないので放っておく。
自分の言葉にして伝えることはとても恥ずかしかったけど、律香が真剣な顔で聞くものだからふざける余裕もなく、わたしはただただ事実を述べることに徹しようと決めた。
そして最も重要なのは、あの木曜日のことである…。
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わたしも逃げてばかりいないで、良い加減認めなければいけなかった。
……自分の気持ちを。
「おい、柴?」
心配そうな声音にはっと意識が呼び戻される。
言わなきゃいけない。
…逃げちゃいけない。
「……あの、さ、佐藤さん……怒らないで、聞いて欲しいのですが……」
「あ?なんだよ」
既に眉間に皺が寄りまくっているけど見なかったことにしよう。
今からわたしが言おうとしていることは多分とても身勝手で、都合の良い話だ。
佐藤さんがそれを聞いてどう思うのか、考えると少し怖い。
わたしに落胆して「好き」を撤回されてしまうかもしれないし……こんな奴だったなんて、と見限られるかもしれない。
だけど……これが本当の気持ちだから伝えたい。
佐藤さんには変な嘘なんて吐きたくない。
緊張から震える指先をぎゅっと握り、意を決して重たい口を開いた。
「…………ごめんなさい、佐藤さんの気持ちには応えられません」
佐藤さんが息を呑む音が聞こえた。
怖くて目を合わせられない。
視線はうようよと床を彷徨いながら、だけど想いは伝わりますようにと願いながら言葉を紡ぐ。
……いや、だめだ、ちゃんと顔を見て話さなくちゃ。
佐藤さんはわたしに告白してくれたとき、真っ直ぐに気持ちを伝えてくれた。
なのにわたしがこんな態度じゃ失礼だ。
泣き出したいような感情のまま思い切って顔を上げると、少し悲しそうな顔をした佐藤さんと視線が絡んだ。
……また、その、顔。
そうさせているのは他でもない、わたしなのに。