佐藤さんは甘くないっ!
いやいやさすがにそれは無理。
毎日一緒に生活するとか…それはもう結婚を前提のカップルみたいなもので。
いやでも佐藤さんは結婚を前提に付き合って欲しいって……またそれは話が別だと思うけど…。
でも合鍵は心の底から嬉しかった。
なんだか初めて特別扱いをしてもらえた気がしたから。
きっと佐藤さんなりに他にも色々気遣ってくれているとは思うけど、こうして目に見える形でそれがわかると安心する。
「……さすがに急かしすぎたか。でも、柴が来たいときに来れば良い」
「ほ、ほんとですか?」
「…約束通り襲ったりしねーから、週末は泊りに来い」
「ええええ!?お、お泊りですか!?ハードル高すぎますよ!」
「一緒にいられるんだからそこは我慢しろよ」
「………か、考えて、おきます」
「ああ、期待してる」
気付けばぽんぽん都合の良いように話が進んでいる。
佐藤さんにとっても、……わたしにとっても。
仕事上の佐藤さんと目の前にいる佐藤さんが同一人物だなんて思えない。
……こんな、甘やかしてくれるひとだったなんて。
ぼーっと佐藤さんに見惚れていると、ぐいっと頭を抱き寄せられた。
なんの抵抗もなくその力に従ってぽすんと佐藤さんの胸に倒れる。
回された腕が、優しくわたしの身体を包んでくれた。
「今まで柴がどんな男と付き合ってきたのか知らないけどな」
「……はい」
「俺は自分が惚れた女の責任は必ず取る。重いなんて言葉で逃げない。死ぬほど愛してやるから覚悟しとけ」
……これ以上の殺し文句なんて、この世にあるのかな。
わたしはとんでもないひとに捕まってしまったのかもしれない。
“お試し”なんて身勝手な言葉で逃げられるのはいつまでだろう。
早くも心臓が早鐘を打ち始めていた。