佐藤さんは甘くないっ!

お料理は創作フレンチといった感じで堅苦しすぎず、マナーに自信のないわたしでも楽しむことができた。

食器にはアリスの絵柄がプリントしてあり、お料理が進むにつれて絵柄の物語も進むという凝りっぷりには驚いた。

佐藤さんは「どうだ?」とわたしに尋ねたきり、黙々と料理を口に運んでいる。

それはいつも通りの光景ではあったが、わたしは意を決して自分から話題を振ってみることにした。


「……あ、あの、佐藤さん」

「なんだ」

「…つまらないし、どうでも良いことなんですけど、わたしの話してもいいですか」


今までそんなことしようとは思わなかった。

佐藤さんとのランチは沈黙が当たり前だし、きっと佐藤さんも興味がないと勝手に決めつけていた。

…だけどわたしのことも知ってほしい。

もちろん佐藤さんのことも知りたいけど、まずは自己開示から始めようと思った。


「……つまらないかは俺が決めることだな」


皮肉っぽいことを言っているのに佐藤さんはふわりと微かに微笑んでいた。

目元が優しく弛んで、わたしのことを受け入れてくれているのがわかる。

こういうときだけ素直じゃないなあ、と心の中で呟いてわたしは自分のことを話し始めた。

いつも支えてくれる律香の事、4人家族で兄がいること、この前律香とお家で飲んだこと、好きなラーメンの味は味噌で、好きなお寿司はサーモンであること。

話があちこちに飛んで、わたしの好きな食べ物の話なんかも交えて、気付いたときには友達に話すようにリラックスしていた。

佐藤さんは料理を楽しみながら相槌を打ってくれて、たびたびコメントをしてくれた。

俺も味噌が好きだ、今度食べに行こうな。

…そんな風に言葉を交わしていることがとてつもなく嬉しかった。
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