佐藤さんは甘くないっ!
「う、うわあああっ…!」
入ってすぐ、内装の美しさに目が奪われた。
可愛いトランプの壁紙、うさぎの置物、すべてどこか不思議の国のアリスを想像させるものだった。
床にはネコの足跡が点々と広がっている。
おまけに小さなドアがいくつかあって、これはもうどう考えてもアリスモチーフのお店だ。
「柴、こういうの好きだろ」
得意げに微笑を見せる佐藤さんが可愛かった。
だけどわたしは仕事中にそんな話はしないし、今まで佐藤さんに伝えた覚えもない。
その情報はどこから入手したんだろう。
「大好きです!……でもどうして知ってるんですか?」
「…秘密。ほら、行くぞ」
大きな掌でワンダーランドへと引き込まれていく。
店内は全て個室になっていて、どこの席も埋まっているように見えた。
一番奥の個室に通されて、アリスのような格好をした店員さんがやってきた。
飲み物のオーダーを伝えると、料理はコースで運ばれてくるとの説明を受けた。
「わたしだけお酒飲んで良いんですか?」
「好きだろ?俺は構わない」
普通、自分が運転手で飲めなかったら嫌がりそうなのに。
こんなときにも佐藤さんはわたしの好みを把握して甘やかすからずるい。
「あの……このお店にはよく来るんですか?」
聞いておいてなんだけど、どう考えても佐藤さんの趣味じゃない。
だけど言葉が聞きたくて意地悪な質問をしてしまった。
眉間に皺を寄せた佐藤さんは、ぷいっと顔を背けるようにして頬杖をついた。
「秘密だ」
耳がほんのり赤くなっていてすぐにわかってしまった。
……わたしのために、調べてくれたんだ。
どうしようもない幸福感で満たされる。
嬉しさから思わず口元が緩んでしまい、佐藤さんから照れ隠しの強烈なデコピンを食らった。