Caught by …
 爽やかで優しい笑顔を浮かべて私たちの所まで来ると、私に満面の笑みを向け、肩に手を置いた。

 二人の言い合いも止まって、とりあえず助かったことに安堵の息をつく。

「またいじめられてるの?まったく、二人ともやめてほしいよ。セシーリアは君たちとは違ってか弱いんだから」

 ね?と相槌を求められるけど、私は苦笑いを浮かべるしかない。二人は二人でにやにやと意味ありげな笑顔を交わし合っていた。

「なんだよ?気持ち悪く二人で笑って」

「ふん!別にぃ?でも…あんまり大事にしすぎてたら、ぽっと出てきた野獣に奪われちゃうわよぅ?」

「あー…かもね?セシーリアって、経験がないからこそ危ないタイプに流されちゃいそうだから、早いとこ終わらせといた方があんたの為でもあるね」

 二人の会話に耳が遠くなりそうだった。心臓がうるさくなる。消そうとしても、思い出してしまうあの日の夜。彼の熱。

 私は…流されてしまっているだけなのかな。一人で浮かれていただけで、彼は何とも思っていないのかな。じゃあ、どうして自分の事を忘れさせないようなものを置いていったの。私、遊ばれているの?

「セシーリア?…ほら、怖がっているじゃないか。二人が馬鹿げたことを吹聴するから!」

 トムに「気にしなくていいよ」と優しく声をかけられても、しばらくは何も答えられなかった。そんな私を不審に思ったアンネに名前を呼ばれて、ようやく「大丈夫」とだけ返すことができた。
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