Caught by …
「ほんとに大丈夫?…実は前々から君の体調が良くない気がしてたんだ。だから、ここにも来たんだけど。今日はもう帰って休んだほうが良いよ?僕が送ってあげるから」

 彼の声に生返事しかできない。ぐるぐると悪い思いが頭の中を支配して、苦しくなる。


“彼女、男に遊ばれてたんだって!”

“えー?あの完璧主義の人が?”

“まさか、男に捨てられたぐらいであんな事したの?”

“所詮はそれくらいの女だったのよ”


 やめて…お願い……消えてよ…聞きたくない!

「セシーリア?セシーリア!?」

 私は自分でも無意識にカフェから飛び出していた。

 三人には変に思われたかもしれない。それでも、あの場にじっとしていられなかった。消えてくれない、耳障りな声たち。逃れようとしても、それは私を追いかける。

 逃げなきゃ、逃げなきゃ、私も…!

 行き交う人に何度もぶつかる。冬空の中をコートも着ないで全速力で逃げる私に、人々の訝しげな表情。それさえ今の私には怖くてたまらない。

 甘ったるくてキツイ香水の匂い、真っ赤なリップ、尖った爪、口々に罵る言葉、高笑い。

 逃げれば逃げるほどに、私を追いかける。

 私は、あの人とは違う。あの人なんかと同じ訳ない。そうでしょう?ねぇ、違うと、誰か言って!

 カーディガンのポケットの中に入れていた携帯を取りだし、何度も押して覚えた番号を無心に押して、電話をかける。あれだけ躊躇していたのも忘れて、早く出て…と祈る。けれど…──
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