Caught by …
 送ってもらう車中で、彼は楽しげに喋る。私は相槌をうちながら意識はどこか遠くを彷徨う。

 彼に本当のことを、本当の私を話さなければいけない。それは日が経つにつれて重みを増して私の心にのしかかる。なのに、私はまだ彼に甘えている。彼が与えてくれる安心に頼っている。

 そんな資格、もうないのに…。

 こんな最低な私を知れば、トムは嫌いになる。それで口悪く罵ってくれれば、いっそ気が楽だ。けれど、彼はそんなことはしない。争いを好まない平和主義で、冷静さを欠かず大人びている。

 隣の彼を盗み見て、私の心がまた一つ暗いものを積み重ねた。

「セシーリア?寒い?暖房をもう少し強くしようか」

 ちょうど信号待ちで、トムの手がハンドルから膝に置かれていた私の手に触れる。冷え性の私は指先まで温まることはほとんどない。それを心配するトムの優しさに、胸が痛んだ。

「ん?どうかした?」

「いいえ、大丈夫よ」

「そう?…あ、あと少しで着くよ。どこか寄りたい所はない?スーパーとか、買い物するなら付き合うけど」

 私を第一に考えてくれる彼に、どうしてそんなに優しくなんかするの?…と、訊ねてしまいそうになる。彼の優しさを疑うなんて、最低もいいところだ。そう分かってて、だけど、一度疑心暗鬼に陥った私は止まらない。

「帰りたく、ない」

「…え?」

 目を丸くする彼から目をそらし、トムの手をぎゅっと握り返す。

「あなたの…所に、行きたい」
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