Caught by …

　どうして私なんかが好きなのか…親同士の関係があるから仕方なく付き合っているだけなのか…疑う気持ちが大きくなる一方で、そんな自分が嫌になる。

　どうせなら、誰からも嫌われてしまえば楽になれるのかな？誰も私なんかに興味も持たず、存在さえ否定して…。

「セシーリア？」

　トムの気遣うような声が聞こえて、私は俯いたまま勝手に体が動いていた。少し戸惑っている彼の隣に座って、彼が何か言おうとする前にキスをしていた。

　突然のことに動けない彼の首に両手を回す。目を閉じて、彼を求める。

　気遣いも、優しさも要らない。

　こんな弱い私を壊してしまって。

　大っ嫌いな私を…守ろうとしないで。

　私が本当に必要としているのは、トムというボーイフレンドで、一度触れあっただけの男なんかじゃない…と証明して、私をめちゃくちゃにして。

　冷静さを欠いた無我夢中の私の頬を包む大きな手。だけど、それは彼から私を離した。

　離れた唇は虚しく、見上げた彼の初めて見る困惑と少しの疑念を抱いた表情に、私の手は力をなくしてだらりと落ちる。

「セシーリア…今の君は、君らしくないよ」

　彼の言葉が何度も耳の中で繰り返される。自分でも分からないその答え。私らしい私は行方不明で、誰も居場所を知らない。見つけようなんて、誰も思わない。誰も、見つけられない。

　そもそも、相手に不快感を与えない笑顔と、自分を出しすぎないことが何よりも大切だって知っていたのに、それを忘れちゃいけなかったのに。私らしさなんて…必要ない。