Caught by …
 今度ははっきりしすぎる言葉にたじろぐ。すぐに答えられなかった私に、彼の眉間にしわが寄せられる。

「どうなんだ?」

「………ぃわよ」

「ん?」

「ね、寝てないわ」

 昨夜、彼とは別々に寝て私には指一本触れなかった。

「本当か?」

 私が頷くと、レイは不機嫌そうな顔をして顔を反らす。その横顔は以前にも見た気がして、つい見入っていると目だけこちらに向けて睨まれる。

「なんだ?」

「それはこっちの台詞よ。どうしてあなたが怒ってるのか分からない」

「…怒ってない」

「怒ってるわ」

 そう言うと黙るレイに、どうしてかを聞こうとして開けた口を、突然彼に塞がれた。

 戸惑う私を面白がるように、口の中に舌を入れると私の舌先に触れて、すぐに離して、また…と繰り返す。その焦れったさが歯痒くて私から求めると、彼の舌が吸い付くように絡まって、だんだんと激しく深まっていく。

 何も考えられない。

 ただ彼を感じていたい。

 あの夜に覚えてしまった甘い毒が、再び私を蝕ませるのだ。

 レイは私にとって、中毒性のある麻酔のよう。

 彼とのキスは、何も考えられないほど頭をとろけさせて、体の奥が彼を求めて切なく疼く。
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