Caught by …
 いつもより声が上擦ってしまうのは仕方のないことだ。なにせ、私はまだ夢うつつな状態だから。

 だけど、電話越しに聞こえた声はよく聞くと怒鳴っているというより切羽詰まったもので、私の声を聞くと相手が黙ってしまった。

「あの…?」

 まず名乗った方が良いのかな、と思ってレイを見ても素知らぬふりをして窓の方を見ていた。

『どなたか知りませんけど、これ、レイの携帯ですよね?』

 レイに抗議の視線を送ってると不意に聞こえた声に、慌てて「はい!」と答える。

『…あなたと彼の関係の邪魔するつもりはありませんから悪しからず。私はバルバラ、彼の仕事仲間です。そこにレイもいるんでしょう?なら、早く帰ってくるように。一時間…今から一時間以内に帰ってきなさい。さもなくば本当に鎖で繋いで当分の自由を奪われると思いなさい!分かったわね、レイ‼』

 最後は抑えきれない怒りとともに乱暴に切られた。

 ツー、ツー…と通話終了の音と、なんとも言えない空気。

「レイ?物凄く物騒な事を聞いた気がするわ」

 気のせいだと思いたいのは彼も同じらしく、表情さえ変えないが「ああ」と答えた彼の声は暗い。

「早く帰った方が良いと思うのだけど」

「そうみたいだな」

 他人事のように言って…と心配する私を見下ろす彼は、黙ったまま動かない。それに顔がほんのり上気している気がした。

「どうしたの?」

「…やらしいな、と思って」

「え?」
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