黄昏に香る音色 2
関係者専用入り口の前で、
立ち尽くしていた直樹の携帯が鳴った。

「和也…何かあった?下の店は、よくわからないから…」

「そんなことは、後でいい!お前、今…速水といっしょか!」

和也の声が、荒げている。

走っているからだ。

「今、離された。俺は、関係者の通路に入れなかった」

「そこにいろ。動くなよ」

和也は、地下鉄の階段を上がると、

会場までの人混みをかき分けながら、走る。

もう開場しているはずだが、チケットを手に入れられない人が、大勢いるのだ。

「和也!」

人混みの向こうで、大きく手を振る直樹。

「直樹!」

和也は、全力で走る。

「どうしたんだ?こんなところまで…」

直樹の言葉を遮り、

「時間がない。行くぞ」

和也は、関係者専用出入り口の前にいるガードマンに、

「このコンサートのスポンサーをしている、時祭コーポレーションの者です」

和也は、まだ返していなかったIDカードを見せた。

「本社から、連絡がきているはずですが…」

ガードマンは訝しげに、入口にある電話をかけた。

しばらくして、

ニコニコした顔で、

「お二人様ですね。どうぞ、お入りください」



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