黄昏に香る音色 2
つまり、こういうことなのだ。

面倒なことには、関わりたくない。

誰かの責任にすれば、楽になる。

「失礼します」

授業が近い為、

ゆうは職員室を出ようと、ドアを開いた。

「うん?」

ドアの前に、誰かいた。

「如月さん…」

里緒菜は、うつむいていた。

「職員室に、何か用?」

ゆうが、道を開けようとしたら、

里緒菜は手を振り、

「いえ、違うんです!」

ゆうは、肩をすくめると、

廊下に出て、歩き出す。

「先生!」

慌てて、里緒菜が後を追いかける。

「か、香里奈…速水さんのことで、何かあったんですか?」

里緒菜は、ゆうの横に並んだ。

「聞いてたのか…」

「はい…」

里緒菜は頷いた。

ゆうは失笑すると、

「何の問題もないよ」

「でも…先生が責任を取ると…」

ゆうは、足を止めた。

そして、里緒菜の方を向いた。

「教師にとって、一番大切で、守るべきは、生徒だ」

里緒菜は、少し驚きながら、ゆうを見た。

「学校の名誉とか、評判とかではないよ」

「先生…」

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