黄昏に香る音色 2
「それが、どうかしたのですか?」

光太郎が、こんなことを言うなんて、初めてだ。

和也は気になり、光太郎の返事を待った。

「安藤理恵を知っているか」

光太郎の言葉に、和也は考え込む。

「安藤理恵の血筋だ」

あっと声をだし、和也は、思い出した。

安藤理恵…香里奈の父親の母親…つまり香里奈の祖母。天才と呼ばれた歌姫だ。

「そんなことより…その女だ」

光太郎は、料亭で会った少女の顔を思い出していた。

ただの会席だったが…。

その瞳…

の強さ。

光太郎の脳裏に残っていた。

「あの目の強さ…私の心に残るほどの…。あれは、何かを成し遂げる為には…何でもする人間の目だ」

「その子は、速水の…」

「あの年で、あそこまで力がある目を…私は知らない」

光太郎は振り返り、和也を見た。

「お前は…私が入学させた。が…あの子は偶然だ…」

光太郎は、孫の香里奈を得る為に、和也を同じ高校に入学させた。

光太郎は、グループを継ぐため、香里奈の母…明日香とその母を捨てていた。

和也は、光太郎の真剣な表情に驚いていた。

「香里奈や…如月グループの1人娘。そして、その女…」

光太郎は、また窓の方を向いた。

「時に人は…引かれ合うことがある。運命に導かれて…そうなれば…もうそれは…偶然ではない」

「必然と…」

和也は言った。




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