黄昏に香る音色 2
勝ち気な虚言
「ふう」

大きく息を吸うと、香里奈は歩き出した。

直樹は、部活が始まったから、

忙しくなり、いっしょに帰ることが少なくなっていた。

勿論、祥子も恵美も。

1人、店まで歩こうと、

校舎を出てすぐ、

後ろから呼び止められた。


「速水さん」

香里奈が振り返ると、

笑顔の優がいた。

最初、誰かわからなかったけど、

香里奈は思い出した。

淳の事件の時、屋上の階段近くにいた優を。

「ああ〜」

と言ったものの…

名前を知らない。

優は、クスッと笑うと、

頭を下げた。

「隣のクラスの高木優です」

「隣のクラス!?」

香里奈は優を見つめた。

「突然で、ごめんなさい」

優はまた頭を下げ、

「速水さんは、有名だから…それに」

優は体の後ろから、隠していたものを出した。

「あたしも、音楽やってるんで」

それは、ギターケースだった。

普段は、布を捲いてギターケースに見えなくしているのだが、

今は布は取っていた。

優は、香里奈に満面の笑顔も見せていた。


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