黄昏に香る音色 2
「あっ、そう何ですかあ」


香里奈はそう言うと、頭を下げ、優に背を向け、

歩き出す。

優のことは、あまり知らないし、

馴れ馴れしく話すことも、嫌いだった。

「あの…」

優は少し戸惑い、

手をのばしたが、

香里奈が止まることは、なかった。


「チッ」

優は、軽く舌打ちした。

急いで、ギターケースに布を捲くと、

優は、香里奈の後ろを歩き出した。

最寄りの駅は、香里奈の歩く方向と同じだった。



駅前に立ち、ダブルケイへと帰っていく香里奈の後ろ姿を見送った。

今日は、公園でギターを弾く気にはなれなかった。


(どうせ…あの人は来ない)

優も香里奈に、背を向けると、

地下鉄への階段を降りていった。

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