黄昏に香る音色 2
空港から、

明日香と啓介は出てきた。

久々に、帰ってきた日本がとても懐かしく思えた。

「行きましょうか?」

明日香は、空港前のターミナルに並ぶタクシーに乗り込む。

啓介は、明日香の横顔を見ながら、

飛行機内の会話を思い返していた。




「もう…あの子は、あたしたちの子供でしょ?」

啓介は、ティアからきかされた真実を、

明日香に伝えられずにいた。

和恵は、

啓介と百合子の子供ではないという事実。

誰とも、血がつながっていないという真実を。

啓介は、言いそびれていた。

やっと日本に帰る便に乗って、和恵に会うと思った時、

啓介は覚悟を決めた。




真実をきいた明日香は、

驚かなかった。

まるでわかっていたように…。

四六時中、一緒にいた母親だから、

薄々気付いていたのかもしれない。


「啓介…」

明日香は、隣に座る啓介の手に、そっと

手を重ねて、

「この話は…2人だけの秘密にして」

明日香の目が、少し潤んでいる。

「もし…あの子が、それを知ったら…まだ耐えられないと思うから」


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