黄昏に香る音色 2
「いいのか?そんな簡単に、引き受けて」

携帯電話を切った明日香に、啓介がきいた。

店は、営業していたから、明日香と啓介は、普段使わない裏口にいた。


「如月グループの跡取りだぞ。お前のお父さん…時祭とは、ライバル会社だ。問題にならないのか?」

啓介は、明日香の目を真っ直ぐに見据えた。

啓介の心配は、もっともだった。

だけど、明日香は…。

「大丈夫よ。あたしと時祭は、関係ないわ」

明日香は、啓介に微笑みかけた。

「確かに…高校生が、家を出て、1人で暮らす。未成年であり、親の許可も取っていないかもしれない…。だけどね…」

明日香はゆっくりと、歩きだす。

裏口の3メートル先は、崖になっており、

そこから、いつもと違う街並みが見えた。

店の横をぐると回らないと、舗装された道に出ない。

ここは雨降ると、すぐにぬかるんだ。

「女の子が、自分で成長する為に、決心して、覚悟したなら…その子はもう、大人なのよ。世間が決めた未成年の定義なんて、年齢だけよ」

「確かに、二十歳になっても、大人にならないやつは、多いからな」

啓介は、頷いた。

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