黄昏に香る音色 2
彼女といるところ
慌ただしく、営業は続く。

律子の笑い声と、

いらっしゃいませと、

元気な里緒菜の声。

それに、誘われるように次々と、お客さんが入ってくる。

「里緒菜ちゃん。もうバイトの子が来るから、上がってくれていいのよ」

カウンターで、お客さんの相手をしながら、

律子は、ホールで忙しく動き回っている里緒菜に、声をかけた。

「はい。上がらせて頂きます。お母さん」

里緒菜は、エプロンを外すと、ホールの奥へ消えていった。

100人は入る店。

律子の店は、もとの小さな店舗から、町の中心部に移転し、

5階立ての自社ビルを持つに至っていた。

1階&2階は店舗。

3階は、事務所。

4階と5階は、律子と和也。

そして、里緒菜の家になっていた。

里緒菜は裏から、3階に上がる。




「もう店はいいの?」

少し驚いたように、和也は里緒菜を見た。

ディスクの上に、紙を並べ、和也は立ちながら…腕を組んで、悩んでいた。

「どれがいいと思う?」

デザイン画。

「そうね…次の新作?」

里緒菜は、ディスク上を覗き込んだ。
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