黄昏に香る音色 2
「明日香…やつは、生きてるのか…」

明日香の返事はない。

「生きてるのか!啓介は!」

サミーは、電話越しに叫んでいた。

「啓介は…」

明日香は、言葉を噛み締め、

「あの人は死んだわ」

サミーは認めない。

「人を狂わせる音を吹けるやつなんて、そうはいないぞ!」

興奮しているサミー。

「サミー…。啓介は、死んだのよ…」




明日香は電話を切った。

しばらく、その場で、立ち尽くしてしまう。




「ママ…時間だよ」

和恵の声に、我に帰る明日香。

場内アナウンスが、日本行きを告げる。

「帰りましょう…お姉ちゃんのところへ」

和恵が笑顔で頷くと、明日香は、手をつなぎ、

歩きだした。

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