天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
女神
11時39分。

不慣れな次元刀を握り締めながら、明菜はじりじりと近づいてくる…魔物と化した実行部隊と対峙していた。

逃げることはしない。

(生きる)

心の中で、強く願う。

今、背を向けた瞬間、あたしは殺される。

明菜には確信があった。

一気に間合いを詰められて、後ろから殺される。

と思った刹那、一匹の蝿のような顔をした者が、目の前に出現した。


「きゃっ!」

明菜はとっさに、横凪ぎに次元刀を振るった。

真っ二つになる蝿男。

しかし、それが合図となった。

一斉に、襲いかかる実行部隊に、明菜は剣を振るった格好のまま…すぐに動けずにいた。

(駄目!)

思わず目をつぶってしまった明菜は…激しい光を、瞼の向こうからも感じることができた。

「この人は…あたしの客人だ!触るな!」

鋭い声とともに、物凄い爆音が響いた。


数秒後、何とか瞼を上げた明菜は、前に立つ…人物に、体を強ばらせた。


「綾子ちゃん…」

明菜の絞りだすような声に、

綾子は振り返った。

「お姉ちゃん」

微笑む綾子の向こうは、十メートル程…地面が抉れていた。


その様子に、明菜は次元刀を握り締めた。

きりっと睨む明菜に、綾子は笑った。

「お姉ちゃん…冗談でしょ?」

「綾子ちゃん」

剣先が震えながらも、明菜は綾子に、次元刀を向けていた。

綾子は、ため息をつくと、 

「お姉ちゃん…無駄よ」

綾子の目が赤く光ると、明菜は何かにぶつかったように、吹っ飛んだ。

二メートル先に、尻餅をついた明菜に、綾子は鼻を鳴らした。

「フン!あんたは、ただの餌なの!あいつらを釣る為のね」

そして、綾子は瞳の力で、明菜の自由を奪うと、

ゆっくりと明菜に近づいていった。



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