天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
部屋を出た仁志は、左右に延びる廊下が、焦げ臭いことに気付いた。

肉が焼ける臭いに、薄らと煙たい。

「左から行って…裏口から、逃げた方が安心よ」

突然、真後ろから声をかけられ、仁志は振り返った。

いつのまにか、廊下の壁にリンネが、もたれていた。

仁志の本能が、底知れぬ恐怖を感じた。

震えて動けなくなる仁志に、クスッとリンネは笑うと、

「あなたは、殺さないわ。彼女の願い…無駄にする気?」



仁志ははっとなり、また頬を叩くと、顔を引き締めた。リンネに頷くと、仁志は左の方へ廊下を走っていった。

もう震えることはなかった。 


リンネは、その様子を見ることなく…ため息をついた。

「………今日は、おかしいわ」

自分の行動が、理解できなかった。

山根の命で、仁志に近づこうとした者達は、すべてリンネにとって、燃やされていた。



「まあ…いいか…」

リンネは、もうすぐに命果てる千秋に、付き合うことにした。 



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