天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「こんなところで、言い合っても仕方ないわ」

緊張が走るリョウとフレアの間に、ティフィンが割って入った。

「真実は、剣を抜いた時にわかるんだからさ」

ティフィンは特に、フレアに顔を向けて、説得した。

フレアは何も言わずに、リョウに背中を向け、死体の上を歩きだす。避けて、通る隙間がない。


リョウも、来た道を戻るわけにもいかずに、フレアの後に続く。

歩きながら、リョウは考えていた。

(フレアが知ってるなら…父さんは知ってたはずだ)

管理局に勤めていたロバートが、知らないはずがない。

それなのに、行けと促した。

(どうしてなんだ?)

疑問を抱きながら、リョウは死体の隙間を、爪先を入れながら、進んでいった。

仕方なく…人を踏んだ時の靴から感じる感触に、リョウは顔をしかめた。

「俺の屍をこえていけ!」

ティフィンが、リョウの横に飛んできた。

「そういうのが、人間は好きなんだろ?」

ティフィンの言葉に、下に集中しているリョウはこたえた。

「好きなわけがないよ」


ある程度進むと、死体の数は減っていった。


楽に歩けるようになると、リョウはティフィンにきいた。


「岬にたどり着いた人はいるの?」

「いたけど…」

ティフィンは、肩をすくめ、

「誰も、剣に近付けないわ」

「どうして?」

ティフィンは、リョウの周りを一回転し、

「行けばわかるけど…守ってるやつが、化け物なのよ」

顔をしかめた。

「防人……」

フレアは、足を止め、空を見上げていた。

リョウはフレアに追い付くと、見上げた。


ヒビが多くなっている。

もう指で弾いただけで、砕けそうだ。

「何とか…間に合ったわ」

フレアはそう言うと、リョウの腕を取った。 

「フレア」


「飛びます」

「え?」

リョウの腕を持つフレアの手に、少し力が入った。

すると、フレアとリョウはその場から消えた。

それを見たティフィンは、微笑み、

「頑張れ。あんたにかかってるんだ。いや…」

ティフィンは首を横に振り、

「かかってたんだ…」


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