天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

さよならのリターン

「え!え…え!ど、どうして…」

リョウとフレアは、一気に数十キロをテレポートしていた。

リョウの目の前に、地面に突き刺さっている剣があった。



「間に合ったか…ぎりぎりだな」

剣の向こう…岬の先に、胡坐をかいた男が、背中を向けて、海を見ていた。

島を囲む結界は、ヒビだらけになっていた。

男は立ち上がり、振り向いた。

胸まで伸びた白い顎髭と、皺だらけの顔が、精悍さを醸し出していた。

はち切れんばかりの筋肉が、まだ現役であることを、見せ付けていた。

「フレア…ご苦労だった」

白髭の男は、フレアに頷いた。

フレアは、頭を下げると、ゆっくりとリョウに近づき、戸惑っている彼の胸に、手を当てた。

「フ、フレア…」

リョウには、フレアの行動の意味がわからない。

フレアは手を当てた後、そっと頬も押しつけた。

「あたしは…種火…。あなたの種火…。再び…あなたに、火をつけ…あなたの中に、戻ります」


「フレア?」

突然、リョウは心の中が、熱く…燃えていくのを感じた。

「さあ…リョウ…」

フレアは、リョウの胸から離れると、リョウの腕を取った。





「フレア…僕は、剣を抜かないと……」

手を伸ばした僕を無視して、フレアとリョウが離れていく。


フレアと……リョウが離れていく。


(何?)

僕がここにいるのに、リョウは向こうにいて、離れていく。


「何も心配することは、ありません」

白髭の男は、立ちすくむ僕の手を取り、

「剣を握るのです」



(剣?)

僕は振り返ると、地面に突き刺さっている剣が、目に飛び込んできた。

僕はその剣に、見覚えがあった。


記憶が、湧き出てくる。

「………ライトニングソード」


僕の言葉に、白髭の男は泣き出した。

「そうです!ライトニングソードです。かつて…ティアナ様のものだった剣です!ティアナ様亡き後…この剣を持つ資格があるのは、あなたしかいません」

僕は近づくと、剣の柄を握った。 


「赤の王よ!」
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