天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
いっしょにいても、永遠のさよなら
「帰ったか…」

朝を迎える前に、目覚めたロバートは、テント内に赤星がいないことを確認した。

「仕方がないか」

ロバートは呟くように言うと、テントから這い出た。

もう意味がないから、結界を解くと、ロバートは岩場から歩き出した。

砂浜まで伸びる階段を、ゆっくりと降りていく。

まだ太陽は、昇っていない。

後ろを振り向くと、微かに明るくなりかけている。

ロバートは、砂浜に足跡を残しながら、

海に近づいていく。

「戻ってくるかな…」

赤星に、酷なことを言ったのは、分かっていた。

彼に、この世界を守る義務はない。

しかし、この世界には、彼が必要なのだ。

理不尽だと思うが…ロバートは、エゴを押し付けることにした。

「不甲斐ない」

ロバートは、自分に毒づいた。

自分に力があれば…。

ロバートは、左手の薬指にはめた指輪を見つめた。

エメラルドに輝く指輪。



「サーシャ…」

ロバートは、押しては引く波が…ぎりぎり靴に当たるところで、足を止めた。

朝日が少しずつ昇るたびに、指輪は輝きを増していった。

その輝きは決して、眩しくなく、

切なかった。
< 118 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop