天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
あの日。

「サーシャ!」

消え去ろうとするサーシャの魂に、ロバートは手を伸ばした。

38度線の戦場で、光を失った空間に向けて、

ロバートは走り出した。

「ロバート!」

仲間の声を振り切り、持ち場を離れ、結界の外に飛び出すと、

ゴブリンの群に突っ込んだ。

「邪魔だ!」

ロバートは両手を広げ、気合いを入れる。

ロバートの周りにいるゴブリン達が突然、

地面にめり込み出す。

それは、ロバートの攻撃魔法――重力操作だった。

半径5メートル内の重力を、自由自在に変えられた。

だから、自分自身にかかる重力を調整すれば、空を飛ぶことも可能だった。

一瞬にして、ゴブリンの群の頭上を飛び越えた時、

サラからの撤退の命令が、魔物達に響いた時だった。

「サーシャ!」

ロバートの足元で、ゴブリン達が引き上げ、

ドラゴンや蝙蝠の魔物達が、ロバートの横や頭上を通り過ぎていく。

ロバートは、結界を球状に張りながら、空に浮かんでいた。

「サーシャ!」

ロバートの絶叫に、呼応するかのように、

風に乗った朧蛍が、一匹…ロバートの結界に、吸い込まれるように近づいてくる。

そして、結界に触れた瞬間、

ロバートの結界は、エメラルドグリーンに輝きだした。
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