天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
アステカ王国から脱出したジャスティンは、テレポートアウトした瞬間、跪いた。

身に纏った結界は消え、もとの姿に戻る。

「やはり…活動時間は短いな。約3分か」

プロトタイプブラックカードの残高は、零になっていた。

無限に使えるブラックカードと違い、自らポイントを集めなければならないプロトタイプブラックカードでは、ディグの活動時間が決められていた。

それに消費する魔力が、尋常ではない。

ジャスティンは立ち上がり、ブラックカードの残高を確認した後、上着のポケットにしまった。

「仕方あるまい」



体術をメインとするジャスティンは、ジュリアン・アートウッドのように、対魔法防御を身に纏った能力に憧れた。

防御がいらないなら、武術はそれだけで、さらに強くなれる。

だが、ジュリアンの能力は人間ではなくなったことで、得ることができた力だった。

それは、ジャスティンはしたくなかった。

あくまでも人間でいる。


ディグシステムは、短い時間であるが、ジャスティンの理想に近付けた。

昔、ジェシカ達が使ったディグと違い、魔力に制限がある今回のディグは、魔法を使えなかった。

いや、使えば、使用時間が単純に減る。


「まあいいさ」

ジャスティンは歩きだした。

ブラックカードが零になった為、ここがどこかわからないが、空気がある場所なら、恐れることはない。

周りを囲む緑一色の風景は、人間がいないことを示唆した。

「赤星君と、アルテミアが再びくれた命。有効に使わねば」

赤星は、カードシステムの塔を破壊する寸前、クラークによってコールドスリープさせられていたジャスティンは、救い出した。

そして、アルテミアによって、彼女に自ら差し出した心臓が戻されることにより、ジャスティンは復活したのだ。


森に入った瞬間、サーベルタイガーに似た魔物が襲い掛かってきた。

それを手刀で仕留めると、早くも新しいポイントを得た。

「また集めるか」

ジャスティンは欠伸をしながら、無防備に森の奥へと、足を進めた。


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