天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「サーシャ…」

結界の中、ロバートの前にサーシャが現れた。

(ごめんなさい…)

サーシャの体は透けており、まるで蜃気楼のように、揺らめいていた。

やさしく微笑むサーシャの目に、涙が流れる。

(あなたとの…約束を守れなかった)

サーシャは、もう消えようとしていた。


(ごめんなさい)

「サーシャ」

消えようとしているサーシャに、ロバートは手を伸ばし、しっかりと捕まえようとするが、

感触がない。

(さよなら)

サーシャは、満面の笑顔を見せた。

「嫌だ!消えるな!」

何度も指を動かし、何とか掴もうとする。

サーシャの手を、腕を、頬を、

胸を、頭を、耳を、唇を。

「離すものかあああ!」

ロバートは全身で、消えかけているサーシャを包むように、抱き締めようとした。

その時、ロバートは思い出した。

魂を捕まえる方法を。

しかし、それは禁呪の魔法だった。

(ロバート…)

ロバートは、感覚のないサーシャの体を、ぎゅと抱きしめながら、

「構うものか」

サーシャに、口づけをした。

「お前が…いなくなる方が、嫌だ」
< 120 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop