天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
ソリッドと話すのも飽きて来たリンネは、

「じゃあね」

と軽く言うと、アステカ王国からテレポートして消えた。


海底都市から一番近い小島に、テレポートアウトしたリンネは、潮の香りより、緑の臭いの強い場所に、顔をしかめた。

炎の魔神であるリンネには、緑はただ…自分に触れると燃え尽きるものという認識しかない。

(フレアは…だから大切にしたいと言ったな)

かつての妹の言葉を思い出していた。

昔は、つねに全身を炎で包み、安易に近づく者はすべて、灰にしていたリンネが、

炎を抑え、人と対話できるようになったのは、フレアのお陰だった。

海岸の砂浜に降り立ったリンネは、一番近くの茂みの中に咲く花に手を伸ばした。

(罪のないものまで、燃やすことはないでしょ)

フレアの言葉に、リンネは笑った。

(思えば…おかしな魔物だった)


しゃがみ込むと、そっと赤い花びらに触れようとした時、

花びらは燃え尽きた。

花びらだけではない。その小島にあったすべての緑が、一瞬にして炎に包まれたのだ。 


「リンネ様」

ツインテールのユウリと、ポニーテールのアイリ――二人の魔神が、リンネの後ろで跪いた。

「炎の騎士団。ご命令により、集結致しました」

ユウリとアイリが同時に告げると、緑を燃やす炎は数えきれない程の魔物へと変わった。

火に属するすべての魔物を束ねるもの。

炎の女神亡き後は、リンネがその資格を得ていた。


「フッ」

リンネは静かに笑うと、伸ばしていた手を握り締め、そのまま立ち上がり、

「久々の進軍だ!ロストアイランドに残るレイの配下であった人間どもを、皆殺しにする!我らが魔王ライに糾う者は、抹殺する!それが、我ら炎の騎士団の役目だ!」

リンネの言葉に、炎の魔物達の体が興奮したように揺らめいた。

「行け!」

「は!」

リンネの命を受け、数十万の魔物が、ロストアイランドに向けて、進軍する。

その様子を、焼け野原になった島に立ちながら、リンネは呟くように言った。

「さあ、どちらを救う?赤星浩一よ」

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