天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「フン」

海上で、満月に照らされて浮かぶリンネは鼻を鳴らした。

「これくらいで、やられるはずはないがな」


静かになった海面の下の闇に、明かりが灯ったと思った瞬間、

海中から水柱が上がり、それが回転しながら、綱のようになると、

空中に浮かぶリンネの全身に絡みついた。

次の瞬間、リンネは海中に引きずり込まれていた。


「炎の魔神であるお前が、海上で奇襲をかけるとは、気でも狂ったか?」

マーメイドモードになったアルテミアが、思念でリンネに話し掛けた。

「それは、どうかしら?」

笑うような思念をアルテミアに送ると、リンネは襲い掛かってきた。

「速い!」

炎の魔神であるはずのリンネが、まるで魚のようにアルテミアとの間合いを詰めてくる。

アルテミアは、チェンジ・ザ・ハートを鎌のような形に変えた。

海中で鎌を振るうが、リンネは避けた。

リンネの腕が形を変え、鋭い刃になる。

「チッ」

アルテミアは舌打ちすると、チェンジ・ザ・ハートをトンファータイプに変え、リンネの刃を受けとめた。

「なぜ動ける?まさか、お前も」

「モード・チェンジではない」

アルテミアの思念を感じ、リンネは否定した。

「だったら…この力は!?」

人魚の姿になっているアルテミアが、リンネに力で押されていた。

足のないマーメイドモードは、格闘戦向きではない。

(トルネードサンダー!)

アルテミアは海中で、拡散する電撃を放った。

自分も受けながらも、リンネにも直撃した。

しかし、電気はアルテミアには効かない。

リンネが少し怯んだ隙に、アルテミアは海中から飛び出した。

「モード・チェンジ!」

白い翼を広げ、天使の姿を月下に晒したアルテミアの目の前に、リンネがすぐに飛び出してきた。


その力強い雰囲気に、アルテミアは目を細めた。

(あたしが知ってる…リンネではないのか?)


アルテミアの疑問を見透かしたように、リンネは笑った。

「あたしは…進化したのよ。それも、魔王から力を貰ったのではなく、自分でね」


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