天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「やめて下さい!」

ジェシカは、僕のやろうとしたことを拒んだ。

突き立てようとした牙を、僕はジェシカの首筋から離した。

「あたしは、人間として死にたいのです。人間ではなくなっても、生きたいとは思いません」

「…」

ジェシカの言葉に、僕は無言になった。

それに気付いたジェシカは、言葉を付き足した。

「あなたを、否定している訳ではありません。ただ…」

ジェシカはショックを受けている僕の手から、手を抜くと、

僕の頬に手を触れた。そして、優しく微笑んだ。

「あたしは、あなたと違い…普通の人間ですから」




「ジェシカさん」

僕の頬に、涙が流れ…ジェシカの手に当たった。

ジェシカは震えながら、力を振り絞り、僕の涙を指で拭った。

「優しい…勇者」

クスッと笑った後、ジェシカは嗚咽した。

血を吹き出したジェシカに、もう時間がなかった。

「僕が、もっと早くここに来たら…あなたも、みんなも守れたのに!僕は…」

自分を責めだした僕に、口元から血を流しながら、ジェシカは首を横に振った。

そして、何とか手を伸ばすと、僕の頭を撫でた。

「ここで…あたし達が、やられたのは…あなたのせいじゃありません。すべてを救わなければならないと思う者は…1人も救えません」

ジェシカは軽く僕を睨み、

「自惚れないで下さい。いくら…あなたでも…みんなは救えません」

そう言った後再び、ジェシカは激しく嗚咽した。

「ジェシカさん!」

ジェシカは、赤星を見て、

「あたし達…人間は、あなた1人に背負わせません…。あたし達は、仲間です。守られるだけでなく…共に戦う仲間…」

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